深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

11-30.ギシギシ

 ギシギシはタデ科の多年草である。道端や田の畔(あぜ)などに生え、日本全国に分布する。ギシギシの根は、羊蹄根(ようていこん)または、「しの根」といい、止血効能のある生薬である。「ギシギシ」という名前の語源は、茎をすり合わせるとギシギシという音が出るからという説があるが、筆者の経験では、そんな音は出ない。

 ギシギシには二種類あるようで、ギシギシとも呼ばれる「スイバ」と「ギシギシ」である。この違いを図に示した。図1が「スイバ」とも言われるギシギシ、図2が「ギシギシ」である。「スイバ」の方が「ギシギシ」より酸っぱいので、その名があるのだろう。繁殖力はギシギシの比ではなく、日当たりのいい堤防に群生している。それにしても、「ギシギシ」という人吉球磨地方での呼び名が正式な植物の学術名である例は大変珍しい。図3は、真冬の大寒の頃に撮影したものであるが、「スイバ」も「ギシギシ」も、真冬でも青々とした葉っぱである。これが、春先になれば、図4のように茎が伸び、夏には花実ができる。

スイバ ギシギシ スイバ② ギシギシ③
図1.スイバ 図2.ギシギシ 図3.冬場 図4.春先
ギシギシのいろいろな生態

 「道草を食う」というたとえがある。馬を運動や仕事のため外に連れ出し、道を歩かせていると、馬は必ず道端の草をはみ、先に進もうとはしない。おなかの空いた牛でもヤギでも同じである。転じて、目的地へ行く途中、他のことで時間を費やし、手間取ることをいうのであるが、筆者らが子供の頃は、道草を食っていた。前述した「サトガラ」や「ツバナ」、そしてこの「ギシギシ」をかじっていた。よくかじって食べたのは茎の部分で、塩を少しつけると酸味も薄まった。オヤツではなく、やはり「みちくさ」の楽しさであった。

 座和さんの「山菜料理のレシピ」から、ギシギシの二品を紹介しよう。

 1)ギシギシのマヨネーズ添え: ギシギシを洗って茹で、水気を良く切って、適当な大きさ
   に切り、マヨネーズを添えたら完成。
 2)ぎしぎしの一夜漬け: ギシギシをビニール袋に入れ、塩もみし、そのまま冷蔵庫で1日置
   く。次の日には出来上がり。

 これは簡単であるが、千葉県の会田さんは、鞘を取って細かく刻み油炒め、茹でて味噌和え、酢の物、味噌汁の具、それにヌカミソ漬けや味噌漬けもできると教えていただいた。


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